研究の最前線から
加速器+“未”臨界原子炉=安全性を追求したハイブリット原子力システム。
未来のエネルギーの姿をつくる。
世界中の研究者がしのぎを削る、先進原子力システムの探究。
我が国の中長期における電源のベストミックス、その選択肢の一つとして原子力システム(原子炉)が挙げられています。研究・開発の鍵となるのは、何と言っても安全性の向上であり、日本をはじめ、世界中の研究者が様々な試みを推し進めています。中でも期待を集めているのが「加速器駆動システム(accelerator driven system:以下ADS)」です。これは加速器と未臨界状態(核分裂連鎖反応が持続せず、時間とともに減少する状態)の原子炉を組み合わせた、言わばハイブリットなエネルギーシステム。大強度加速器によって加速された高エネルギー陽子を、鉛ビスマス(Pb-Bi)などのターゲットに打ち込んで核破砕反応を引き起こし、それによって発生した高エネルギー中性子を、臨界に達しない核燃料を入れた原子炉に照射することで核分裂反応を起こしてエネルギーを得る原子炉です。
ADSでは、核分裂連鎖反応の維持を、外部の加速器中性子源に依っています。ですから加速器を止めれば、必然的に原子炉は停止するため、核暴走が起こらず、より安全な稼働が可能です。また、ADSは「核変換(消滅)処理」が可能であることから“核のゴミ焼却炉”とも呼ばれています。