QSE

エネルギー物理工学講座
中性子デバイス工学分野 (相澤 研究室)

研究の最前線から
加速器+“未”臨界原子炉=安全性を追求したハイブリット原子力システム。
未来のエネルギーの姿をつくる。

世界中の研究者がしのぎを削る、先進原子力システムの探究。

 我が国の中長期における電源のベストミックス、その選択肢の一つとして原子力システム(原子炉)が挙げられています。研究・開発の鍵となるのは、何と言っても安全性の向上であり、日本をはじめ、世界中の研究者が様々な試みを推し進めています。中でも期待を集めているのが「加速器駆動システム(accelerator driven system:以下ADS)」です。これは加速器と未臨界状態(核分裂連鎖反応が持続せず、時間とともに減少する状態)の原子炉を組み合わせた、言わばハイブリットなエネルギーシステム。大強度加速器によって加速された高エネルギー陽子を、鉛ビスマス(Pb-Bi)などのターゲットに打ち込んで核破砕反応を引き起こし、それによって発生した高エネルギー中性子を、臨界に達しない核燃料を入れた原子炉に照射することで核分裂反応を起こしてエネルギーを得る原子炉です。

 ADSでは、核分裂連鎖反応の維持を、外部の加速器中性子源に依っています。ですから加速器を止めれば、必然的に原子炉は停止するため、核暴走が起こらず、より安全な稼働が可能です。また、ADSは「核変換(消滅)処理」が可能であることから“核のゴミ焼却炉”とも呼ばれています。

放射性廃棄物の有毒性を減らして、短命に。

 原子力発電の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物は、ガラスと混ぜて固化処理したのち、地下300メートルより深い安定した地層中に処分することが検討されています。廃棄物は、核分裂生成物とマイナーアクチノイド(MA)とに大きく分けられますが、それらの中には半減期(放射性崩壊によって、放射性同位体の半分が別の核種に変化するまでにかかる時間。寿命の目安)が数万年に及ぶ長寿命の核種が含まれています。これらの物質を短寿命または安定核種へと変換することができれば、環境負荷低減に大きく貢献できる可能性があります。その代表的な方法が、前述の加速器や原子炉を用いて、中性子を照射して人工的に原子核の崩壊を起こし、放射性毒性の低い核種または短い寿命の核種に変える核変換(消滅)処理です。

 相澤研究室では、ADSの炉心特性や安全評価、未臨界度の測定、核変換(消滅)処理の特性分析などを数値シミュレーションで展開する一方、臨界集合体実験装置(京都大学)を用いた基礎実験に取り組むなど、数値解析結果と実験値を比較検討し、両輪で研究を推進しています。原子力エネルギーの安心・安全な利用と、新しい価値を生み出す未来技術の創出に向けて、日々の地道な努力と独創的な挑戦を積み重ねています。

研究の最前線から

加速器駆動システム

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