研究の最前線から
循環型社会の実現に向けた取り組みと評価
高レベル放射性廃液の核種分離プロセスの開発
HLLW中の核種分離研究は早くから原子力先進諸国で行われてきましたが、開発されたゼオライトやフェロシアン化合物などの無機吸着剤を用いる方法では多量の2次廃棄物発生が問題となり、また抽出剤として大環状化合物を用いる溶媒抽出法では選択性が非常に高いものの後処理が困難な放射性有機廃液を多量に排出してしまいます。
そこで本研究室では、溶媒抽出法で使用する抽出剤を担持させた固体を用いる抽出クロマトグラフィーに着目。この方法では高濃度の抽出剤を固体に担持させて分離に使用することが可能となり、さらに有機溶媒の使用も必要最低限とすることが可能になります。また、固相と液相なので相分離も容易となります。担体粒子には、多孔性シリカ粒子(粒径50~100 μm)にスチレン-ジビニルベンゼンを共重合させた多孔性シリカ/ポリマー複合担体粒子SiO2-Pを用いることで、従来のポリマーのみの粒子に比べ拡散・吸脱着速度が著しく向上し、放射線に対する耐性も向上します。これらによって、従来の溶媒抽出法や吸着剤の欠点をほぼ完全に克服できる十分な分離性・効率性を有する革新的な分離回収技術の実現を目指しています。
多孔性シリカ/ポリマー複合担体粒子 SiO2-P
シリカベースの含浸型吸着材のみを用いた抽出クロマトグラフィーによる核種分離プロセス