QSE

粒子ビーム工学講座
核燃料科学分野 (金・呉 研究室)

研究の最前線から
循環型社会の実現に向けた取り組みと評価

高レベル放射性廃液の核種分離プロセスの開発

 HLLW中の核種分離研究は早くから原子力先進諸国で行われてきましたが、開発されたゼオライトやフェロシアン化合物などの無機吸着剤を用いる方法では多量の2次廃棄物発生が問題となり、また抽出剤として大環状化合物を用いる溶媒抽出法では選択性が非常に高いものの後処理が困難な放射性有機廃液を多量に排出してしまいます。

 そこで本研究室では、溶媒抽出法で使用する抽出剤を担持させた固体を用いる抽出クロマトグラフィーに着目。この方法では高濃度の抽出剤を固体に担持させて分離に使用することが可能となり、さらに有機溶媒の使用も必要最低限とすることが可能になります。また、固相と液相なので相分離も容易となります。担体粒子には、多孔性シリカ粒子(粒径50~100 μm)にスチレン-ジビニルベンゼンを共重合させた多孔性シリカ/ポリマー複合担体粒子SiO2-Pを用いることで、従来のポリマーのみの粒子に比べ拡散・吸脱着速度が著しく向上し、放射線に対する耐性も向上します。これらによって、従来の溶媒抽出法や吸着剤の欠点をほぼ完全に克服できる十分な分離性・効率性を有する革新的な分離回収技術の実現を目指しています。

研究の最前線から

多孔性シリカ/ポリマー複合担体粒子 SiO2-P

研究の最前線から

シリカベースの含浸型吸着材のみを用いた抽出クロマトグラフィーによる核種分離プロセス

がんの放射線治療の為のセシウム-137、ストロンチウム-90の利用技術

 がんの治療の一つに放射線のエネルギーを利用した放射線治療があります。現在、この治療法で用いているRIのほとんどはRI製造用の加速器や原子炉で製造したものです。しかし、HLLWの中にも治療に利用することのできる核種が多量に含まれています。本研究室では、セシウム-137のがん小線源治療法への適用を目指して、進歩の著しいカテーテル挿入法に併用可能な直径100~500 μmのβチタン酸粒子体線源の調製に挑戦しています。チタン酸はセシウムの吸着剤としてよく知られており、この粒径を制御し、セシウムを添着後に焼成することで治療に適した形状のセシウム-137線源が作成が可能となります。また、ストロンチウム-90の娘核種であるイットリウム-90を用いたがんの内部放射線治療用薬剤の開発を行っています。HLLWからのストロンチウムの選択的分離法を応用し、ストロンチウム-90と放射平衡にある半減期64時間のイットリウム-90を選択的に溶離するイットリウム-90ミルキング法の確立を目指しています。

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